壱拾頼 月野陽一は祈る

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「ちぃっ!」 「ぬぐ」  とはいえ、さすがに一筋縄ではいかない。【悪路王】は返す手を使い柄部分で梨杏の顔面を強打していた。  それくらいでびくともしない梨杏ではあるが、進路が微妙にずれてしまい結果として、攻撃を外してしまった。 「なるほど、単純だが貴様ならば効果的な戦法だな」 「単純なもんでえらいすませんなぁ」  殴られた頬をさすりながら、梨杏はゆっくりと【悪路王】の間合いを見た。  思った以上に広い間合いだ。攻撃を直撃されれば、どうなるかわかったものではない。  防御力に秀でる種族であるのは間違えないが、そんなことなどお構いなしにひっくり返すのは鬼である。  その昔、北関東地方で猛威を振るった悪鬼、それが【悪路王】だ。  どのような力を秘めているか、わかったものではない。
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