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「あ? なんのことだ、それ。女を連れ去ったり、勝手に乱暴して子供つくらせても、罪じゃね
ぇってか?」
「おレたちは、そうやってイキテでぎたんだ。だれにも、邪魔させナイ!」
激高した瞬間、鋭い蹴りが【かくえん】の顎先を捉えた。
不意打ちの一撃に、彼はよろめきとすぐ横にある古い民家の漆喰壁に手をついた。
その瞬間、彼は嗤った。
【かくえん】が違和感を感じた時には全てが遅かった。
壁についた手がそのまま埋没したのだ。柔らかくなった泥に手を突っ込んだがごとく、手応えもほとんど感じられずに埋没していく。
「残念、もうだめやね。本当に観念するこった」
彼はせせら笑った。その隣に女……ケイが実に残念そうに【かくえん】をにらんでいた。
「さてさて、どっちに売るんかね?」
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