終頼 命あることを祈る

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 結論から言うと、フルドラは助からなかった。  北欧からわざわざ来た目的、命をかけて【悪路王】なぞに協力した理由など、様々な問題が闇へと消えた。  真壁梨杏は、依頼主の一人である鬼童丸から睨まれ、顔や表面がひび割れるのではないかと言うくらいに、震えていたらしい。  彼が怒られた理由は、主に二つあった。前者ではない理由については、彼以上に怒り狂っている者が陽一の目の前に現れていた…… 「よくもまぁ、五体満足で生きていられるなぁ?」  殺気だった声に、空間が震える。  目の前に派手な赤いドレスを身にまとった女が仁王立ちしている。  いや、そもそもこの場がいろいろな意味で派手だ。  きらびやかに回るミラーボール。  薄暗いなかに香る高級そうな白檀の香と女の匂い。  此処は、祇園にある高級クラブの中だった。
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