終頼 命あることを祈る

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 冷や汗を拭いながら、陽一は床に正座していた。  店内には客はおらず、ほかの店員は彼女の剣幕におののき、身を隠していた。 「どう落とし前つけてくれんねん」  彼女の右手には白木の棒が握られている。  鬼夜叉組幹部、四天王が一人【茨木童子】である穂積茨(ほづみいばら)はその美しい角を隠しもせず、牙を剥きだしにしていた。  先日の陽一が先走った結果、ケイが重傷を負ったという話が耳に入ったらしく、彼は強制的に茨の部下に拉致られた。  相手は鬼達、完全に敵対するわけにもいかず、なすがままに連れてこられてしまった。 「いいわけするつもりはねぇですよ」  あれは頭に血が上った結果。どう足掻いても言い逃れなど出来はしないし、激高している鬼女に何を言っても無駄。  しかも相手は、鬼童丸のような鬼の中でも落ち着いた質ではなく、むしろ血気盛んすぎるほどの相手だ。
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