終頼 命あることを祈る

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 時間も時間だったので、少しずつ客も入ってきていた。  キャストも付くことなく、男二人だけでカウンターで酒を飲むという、あまり見ない光景がそこにあった。 「このまえはおおきに」 「いや、助かりました」 「ははっ、そうかしこまらんでええて。親父とちがって、まだ看板は背負っていないからな」  そう言いながら、彼はウィスキーのショットを煽った。  陽一は洋酒は苦手だったので、自前の【酒ノ又三朗】から日本酒を出して飲んでいた。 「八年くらい前の話よ。俺の実家は、祓い屋の一門だった」  ぐい飲みを揺らしながら、揺れる水面をジッと陽一は見ていた。 「まぁ京都の陰陽師のように式神を使ったりはしない。どっちかっていうと付喪神ばかりを使役する、異端的な一門ではあったみたいですわ」 「話には少しきいとった。で、一族皆殺しにした犯人が」  【悪路王】、そう陽一の口から自然と漏れた。
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