壱頼 ルーチン

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「さぁ?」  不安となる未来を言われ、【かくえん】があがきに足掻こうとするが、壁から腕は抜けない。それどころか、引っ張り込まれるようにズブズブと全てが沈んでいく。  パニックになり、術が緩んだのか、顔や体つきが本来の姿に戻りつつあった。  顔は人から大きなサルへ、腕や露出している体からは茶色く長い体毛がびっしりと生えている。  言ってしまえば、こいつは巨大なサルの妖怪だ。しかも、日本ではなく中国にいるはずの種族。  【かくえん】には雌はおらず、そのため種族繁栄させるためには人間の女を襲わないといけない。基本的に、中国の奥地へと追いやられているときいていたのだが…… 「おまえはどっちがええ? 京都最大勢力であり、鬼の巣窟……鬼夜叉組か、これまた京都最大の陰陽師組織である華峰院家への引き渡しだ。どっちもお前の事を欲しとるで」  どっちになろうが、ただで死ぬことはまずあり得ない。  それだけのことをこいつはやってきた。
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