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そうして、彼は優雅な一時を過ごそうとしていたが……それも長くは続かなかった。
「あれま」
陽一の視線の先、店の入り口へ近づく人影はまっすぐに彼のことを見ていた。
茶色いシャギーに赤のラインが所々見える独特のヘアスタイルは見間違うわけがない。
動きやすそうなホットパンツに、皮のジャンパーを羽織っていた。
「おはようさん」
「おはようやない! また携帯を持たずに勝手に外出よって!」
まくし立てるように彼女は怒鳴り、陽一の目の前にどかっと威勢よく座った。
「嫌いやしねぇ」
「そう言う問題やないでしょ! 必要なものはもってぇな」
「い や だ」
陽一の反応に、腹の底から深い深いため息を彼女は吐き倒した。
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