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自然と足が震えた。
それは白い白い壁にまるで映し出されるかのように張り付いていた。
「ヨ……陽一ッ!」
悲鳴が上がった。
先ほどから呼び続ける母の悲鳴だ。
それもそうだろう。
大事な一人息子が頭から血を流しているにもかかわらず、白い壁に向かって呆然と立っているのだから。
「どうしたの!? 大丈夫? 傷は!?」
母は彼を正面から抱きしめ、額に出来た傷を見ようとする。
傷はざっくりと裂けており、未だに新鮮な赤い筋を滴らせていた。
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