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二人は木屋町を離れ、鴨川を渡り祇園の東にある八坂神社から南……清水神社へと通じる二年坂へと来ていた。
もう日も暮れているため人通りもほとんど無い。
街灯も通りにしてはあまり多くはないので、綺麗だが非常に閑散とし薄暗い印象を受けた。
灰色の石畳がぼんやりと光を鈍く反射していた。
「やぁ待っていた」
凜とした声が静かに響いた。
暗がりの奥からパンツスーツ姿の女性がゆっくりと出てくる。
「こちゃっす、鍋嶋さん」
陽一の軽い言葉にも動じず、彼女はゆっくりと頷いた。
つややかで長い黒髪に目鼻がくっきりとした顔立ちに、意志の強そうな切れ長の眉が今日は少し寄っている。
「こんばんわ」
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