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彼は苛立ちをごまかすように、いつの間にか取り出していたキセルを咥えていた。
何も触れていないのに、火が付きゆっくりと煙がゆらゆらと蜘蛛の糸のように天へと伝っていった。
ちょうどそのときだった。
灰色の空から、白く小さなものが近づいてきていた。
「見つけたか」
それは先ほど陽一が放った【鷲峰】だった。
宙を睨み、そして大きく紫炎を吐き出す。その煙を嫌うようにケイが立ち位置を変えていた。
「しゃあねぇ、仕事の時間だわな」
「結果は出たの?」
「あぁ、それっぽいのがいるみたいやね」
どこか諦めたかのような口ぶりにケイも眼を細めた。そして、無言のまま歩き始める。陽一もまた、彼女に合わせるかのようにゆっくりとゆっくりと歩き出していった。
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