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それは二年前の冬だった。
雪の降る日だった。
灰色の空の下、斜めにねじ曲がるようにしてそびえる大木に彼は身を預けていた。
川の音だけが彼の耳をうるさく現世へとつなぎ止める。
山間に囲まれた麓だった。
人里など、ここから何キロも先にしかない。
荒かった息も今は静かになりつつある。
体中の熱も徐々に奪われ、先々の感覚が無くなりつつあった。
頭上はちょうど枝や葉に覆われていないため、雪がそのまま彼へと降り積もっていった。
動かぬ体を抱え、彼はぼんやりと空を見上げた。
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