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彼を助ける義理はなかった。
見つけたのはほんの偶然。
たまたま、気分を変えようと家を出て普段はあまり歩かない畑とは反対方向の川縁へと足を運んだのがきっかけだった。
全てはほんの気まぐれ、ほんの出来心から始まった。
たぶん、私が見つけなければ彼は死んでいただろう。
隠れ里とまではいかないまでも、ここは人里から隔離された山中。
秋は終わりに近づき、内陸部からすると早めの雪景色が始まろうとしていた。
そう、その日も朝からゆっくりと、そして確実に降り積もるかのように白化粧が始まっていた。
山の中で暮らすようになって2年ほどが経っていた。
母が死に、自分という存在が歪であり、周りと違うのだとはっきり自覚出来てから、もうそんなに時間がたっていた。
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