39人が本棚に入れています
本棚に追加
「いい加減疲れたやん」
深く息をつくように陽一はいい、ゆっくりと振り返ろうとする彼女をにらんだ。
紺のウィンドブレイカーを着込み、フードを深々とかぶったその者は舞うかのようにふわりと振り返った。その過程でフードが落ちる。そうして出てきたのは褐色の長い髪。そして日本人ではあり得ないほどに透き通った白い肌だった。
灰色のその瞳が憎悪に燃えるように陽一を睨み付けていた。
「あ~、どん国から来たんだ?」
アジア人の風貌ではない。
どちらかというと……
「欧州圏? 肌の色的には、北欧とかちゃうかな」
ケイの言葉に、陽一も頷いた。
雰囲気的にはそんな感じがする。
「オーガ《おに》と、非力ナ人間?」
歌うような透き通った声だった。
最初のコメントを投稿しよう!