六頼 異国の怪士

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「いい加減疲れたやん」  深く息をつくように陽一はいい、ゆっくりと振り返ろうとする彼女をにらんだ。  紺のウィンドブレイカーを着込み、フードを深々とかぶったその者は舞うかのようにふわりと振り返った。その過程でフードが落ちる。そうして出てきたのは褐色の長い髪。そして日本人ではあり得ないほどに透き通った白い肌だった。  灰色のその瞳が憎悪に燃えるように陽一を睨み付けていた。 「あ~、どん国から来たんだ?」  アジア人の風貌ではない。  どちらかというと…… 「欧州圏? 肌の色的には、北欧とかちゃうかな」  ケイの言葉に、陽一も頷いた。  雰囲気的にはそんな感じがする。 「オーガ《おに》と、非力ナ人間?」  歌うような透き通った声だった。
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