六頼 異国の怪士

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 影の中から前に歩み出たのは浅黒い肌をした男と真っ白な肌をした男だ。共に、筋骨隆々の大男で身長は6尺6寸(2メートル近く)ほどだろうか?  しかし、ケイは怯む様子もなく、一歩さらに前へと出た。  頭が痛い。  陽一にとっては非常に頭が痛かった。  なぜなら彼女は……  思考は次の瞬間途切れた。  目の前の二人が咆哮……いや、遠吠えをあげたのだ。  それは彼らの頭上にある丸い丸い赤き月に向かって。 「おい、まじか」  思わず陽一が悪態をつく。  そうしている間に、大男ははち切れんばかりだった上半身が膨れ上がり、服を引きちぎりながら膨張した。  目の前に変化したのは、白と黒の狼男だった。 「こりゃ、神頼み……かねぇ?」  独白のような言葉が自嘲的な笑みからこぼれ落ちていった。
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