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それでも、諦めるわけにはいかない。
彼の足手まといにはなりたくない。
「無駄やな」
低い声だった。
動か静と言われれば、明らかに静でありながら、その声の底には力があり、怒り……いや明らかな悲哀をたたえている。
「もうやめとき」
チンッという金属音が静かに木霊する。
刀が仕舞われたのだ。
もう稽古をつける気も無いらしい。
それでは困る。
が、この人には逆らえない。
「お前には、姉や親父に匹敵するほどの器はない。とっとと、山へ去ね」
そう断言するのは初老の男だった。
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