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長い灰髪を一つに束ね、彫りの深い顔はこれまでの道のりを物語っている。
現鬼夜叉組組長、鬼童丸は立ち上がれぬ穂積荊を見下ろしていた。
「嫌や。こんなんじゃ帰れへん」
彼女は這うようにして手短な木をつかもうとする。
藁をもすがる姿に鬼童丸は舌打ちをし、容赦なく彼女の横腹を蹴った。
「がふっ!?」
胃液が逆流し、反吐が地面に広がっていく。
「お前の意見なぞ、聞いとらんのや。姉の茨たっての頼みやから、稽古をつけてやったが才がなさ過ぎる」
鬼童丸に稽古と称し山に来て三日となる。
それまで現茨木童子である姉、穂積茨に稽古をつけてもらっていた。
それなりに上手くいっていたと思ったのだが、それは間違いだったのだろうか?
「死にたくはないやろ。手を引きや」
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