七頼 半分の枷

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 一瞬、背筋が震えた。  いや、全身が震えた。  彼から放たれた本物の殺気に本能が恐怖する。  太ももが生暖かい。が、そんなことすらも気にとめるほどの余裕はない。 「おっさん、なにやってんの?」  聞いたことのある声が林に木霊した。  ゆっくりと鬼童丸は声の主を見た。 「そうか、貴様か……半分とはいえ、鬼子をたぶらかすもんやないぞ。人間」  かすかな怒気をはらみ、修羅の鬼がゆっくりと彼、月野陽一と向き合った。  それはもう1年も前の話だった……                 ・
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