七頼 半分の枷

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 異国の怪士は苛烈だった。  その巨体から繰り出されるパワーはもちろんのこと、その身のこなしが見かけ以上に素早い。  所詮、陽一はただの人間である。正面から攻められたらひとたまりもない。 「おっとっと、やべぇやべぇ」  紙一重でギリギリに避けていく。  武芸の心得があるので、歩法などを駆使して、若干たどたどしくはあるが、なんとか避けていた。  しかし、素早さは相手の方が上であり、リーチも人間の比ではない。何度か、その拳が頬や衣服をかすめていた。 「あ、やべ」  後退しながら、避け続けていれば足がもつれることもある。特に足の動きが、頭で描く理想とはかけ離れていればなおのこと……  黒い狼男の口角が上がる。  嗤っているのだろう。同時に荒々しい牙がむき出しとなる。  咆哮が響き渡る。
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