八頼 北より来し者と石壁

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 どうせ朽ちるだけの身だったはず。  違う可能性があるのならば、それはそれで試すだけのこと。 「命を救って頂きました。この身は貴方に捧げます」  その言葉に彼はゆっくりと優雅に頷いた。  次の瞬間、水晶に映る彼は暗くなり霧散していった。 「……明後日出発」  東洋人は片言で言い、ゆっくりと踵を返していった。  明後日、ようやくこの地から離れられる。  そして、早く会ってみたい……  水晶に映っていた彼……それはそれは本当に美しい白い狐だった。             ・
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