ハローハロー・サタデー

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急くように鍵を開け、なのにドアノブを握った途端に手が止まった。玄関のドアを、ゆっくりと押し開く。 漏れ出てきた明かりが、自分の左手を照らした。胸の中いっぱいに安堵が広がり、それ以上の息苦しさが喉をふさぐ。 力強くドアを開けた。すぐそこに彩葉が座っていた。玄関の段差に腰を下ろしていた彼女は、きょとんとした顔で俺のことを見上げている。 「ごめん、……」 そこから先の言葉が出てこなくて、何度か肩で大きく息をした。 「あ……、おかえりなさい」 先に口を開いたのは彩葉の方だった。コートを着て、ブーツも履いている。まさに今俺の部屋から出ていくところだったに違いない。背後にある大きなビニール袋がふたつ、存在感たっぷりに膨れ上がっている。 「……もう帰るつもりだった?」 「あ、はい、いえ、えっと……」 曖昧に返事をして、首をかしげた彩葉の正面に、とりあえずしゃがみ込んだ。ちょうど同じくらいの高さで目線が合う。相変わらず長い睫毛だなと、思わず感心してしまった。 「ごめん、仕事が立て込んで今になって。連絡もできなかったし、ほんとどうしようかと思った」
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