ハローハロー・サタデー

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軽く頭を下げると、彩葉はすぐそこでちいさく笑った。その表情に心底ほっとする。そこから先の言葉がまた出てこなくて、気になっていたビニール袋に手を伸ばした。中身は調味料や米が詰め込まれていて、相当に重そうだった。 「これ何?」 「……えっと、買いすぎちゃって……」 気まずそうに目を伏せた彩葉に、今度は俺の方に笑う番が回ってきた。さっき謝ったばかりだからと抑えてみたけど、喉元から込み上げてきた笑いはすぐに外に飛び出してしまった。 案の定、彩葉はどこか不服そうな目で俺のことを見ている。それがまた可笑しい。「ごめん」ともう一度短く謝ってから、「なんかいい匂いする」と言葉を投げてみた。 「約束のハンバーグ作ったんです。またあとで温めて食べてください」 「俺自分で温めるとか無理」 「え、料理出来るって言ってたよね?」 「今突然できなくなった」 「レンジで温めるだけなのに?」 「うん、無理」 彩葉は僅かに唸って視線を反らし、それから悪戯っぽく口元を緩めた。 「もうちょっと素直に引き留めてください」
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