ハローハロー・サタデー

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「……全然帰ってこなくてショックだった」 彩葉が、俺の手をぎゅっと握った。 「今日楽しみにしてて、でも、充輝君はそうじゃなかったんだって、わたしだけだったと思って……ショックだった」 ごめん、という言葉を飲み込んで、彩葉を見返した。絡まったお互いの指先が、熱を帯びている。 「連絡先も聞いてくれないし、それなのに鍵は一方的に渡してくるし、言いたいことだけ言って行っちゃうし……」 何度か言葉を飲み込むような表情を見せた彼女は、ふうと一息吐いてから口を開く。 「……わたしも、ずっと充輝君のこと考えてた」 生ぬるい空気に、ゆっくりと馴染む柔らかい声。まるい輪郭の唇が、「充輝君に……会いたかった」と言葉をこぼした。 握っていた手を離し、彼女の肩に手を伸ばした。抱き寄せると、何の抵抗もなく腕の中におさまった彼女の頭に、頬を近付け瞼を閉じる。 この間と同じ、甘い香りがふわりと広がった。それと同時に、強張る細い身体が何だかとても愛しい。
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