ハローハロー・サタデー

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玄関の照明だけが灯る、薄暗い部屋。自分の心臓の音が、耳の中で大きく響いている。 背中に回していた手を緩め、彼女の表情を覗き込むようにして顔を近付けた。 このまま帰したくない。「……今日泊まっていって」と独り言みたいに呟いてみる。お互いの息がかかるくらいの距離で、彼女の熱い体温が伝わってくるようだ。 彩葉の作ってくれた約束のハンバーグを二人で食べて、寝転がりながら沢山話をする。まだお互いに、お互いのことは少ししか知らないけど。 大丈夫。訪れる新しい土曜日(明日)を、二人で笑って迎えられる。 彩葉はみずみずしい瞳を俺に向けて、甘えるようにその指先を俺の胸元に添えた。 「じゃあ、今すぐ結婚して」 目が真剣そのもので、「それは無理」と即答した。見つめあったまま二人で沈黙する。噴き出しそうになるのを何とか堪えていると、彩葉は途端に唇をぎゅっと結んだ。 「……じゃあ、帰る」 視線を合わせたまま、どちらからともなく笑い声をあげた。目の前で咲いた彩葉の笑顔が、俺だけのものになったと思うと胸が苦しくなる。 滑らかな頬に指をあてがい、それを確かめるために顔を近付けると、彼女は大きな目をそっと閉じた。 ―fin―
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