プレミアムフライデー・ナイト

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「相手、普通のサラリーマンだっけ?」 坂上(さかがみ)先生が、ファンデーションの鏡で睫毛の位置を直しながら言った。 普段あまり化粧気のない坂上先生の顔は、今日はしっかりと色付いている。薄めの唇にひかれた赤みの強い口紅が、色っぽい。 「そうです。幹事の佐伯さんは不動産会社に勤めてるって言ってました。あとの二人は会社員ってことしか聞いてないです」 今日は里美ちゃん主催の合コンで、里美ちゃんが以前あった合コンで知り合った人が相手方の幹事だ。 メンバーは大学の同級生を連れてくるとのこと。 対してこちらは、職場の同僚。 わたしはここからほど近い東銀座の歯科医院で歯科助手として働いていて、同僚といっても、助手のわたしや受付の里美ちゃんと違い、坂上先生は呼び名の通り、そこで歯科医師として勤務している。 なので、同僚と言ってしまっていいのか微妙なところではある。
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