私は貴方に出会って初めてぬくもりを知りました

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高校2年生の夏休みに入る前のある日。 「綾花、お願いがあるんだけど…。」 申し訳なさそうに親友の米原癒月ちゃんがお願いをしてくる。 お願いの内容はわかっている。だって、ちょっとお話しした程度の人から、先生に至るまで、何回も同じお願いをされているからだ。 「癒月、あんた綾花がどんな思いしてるか知ってるでしょ?」もう一人の親友の萩原優菜ちゃんがかばってくれる。 「だってぇ。マイカ可愛いんだもん。妹にしたいんだもん。」駄々をこねる。 「舞花ちゃんには何回も会ってるでしょ?」 私の妹だ。二人は何回も会っている。癒月は舞花にベタベタなのだ。 「その舞花ちゃんの四日市初公演なんだよ。見逃せないじゃない。」 舞花は中学2年生の春、山口プロダクションの切り札としてメジャーデビュー。お母さんの音楽の才能に、スーパーアイドル山口茜のレッスン。その茜さんの作詞にヒット曲連発のお母さんの作曲。売れないわけがない要素が揃った妹は一気にトップアイドルに上り詰めた。 私が両親と離れて日本の中学に来たのは、幼稚園の時からの親友である二人と約束をしたからだ。だからこの二人を落胆させたくはない。 「これで行ってきてよ。」 私は家族券を二人にわたす。 「えっ、いいの?やった!」嬉しそうな癒月。この笑顔見れたからいいかな。 「じゃあ当日綾花の家に集合ね。」 「はっ?私も行くの?」 「当たり前でしょ。家族券で家族が行かないわけ?」 「3人で行くから楽しいんじゃない。」 はあ、これだから。あまり妹の騒がれてる姿を見たくないんだけどなぁ。 結局押しきられる形で3人で妹のライブに行くことになったのだった
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