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文化祭当日。
GAKUTOのライブは大成功。全校生徒が体育館に集まり、ルーキーバンドに惜しみ無い声援と拍手を送る。
「大成功ね。」
「まさか、綾花がGAKUTOを連れてくるとは思わなかったな。」
舞台袖で私と癒月ちゃんと優菜ちゃんの3人で最後の曲を見守る。
「でも、今日で最後なんだよね…。」私はまた泣きそうになる。
「大丈夫だよ。綾花ならまだ会えるじゃない。」
「でも岳斗さん有名人なんだよ。こんな1高校生なんて…。」
「もう少し待ちなよ。」「?」
何を待つんだろう。
そうこうしていると最後の曲も終わり会場は最高潮で幕を下ろし…。ん、岳斗さんマイク持って?
反対から花束を持った女の子?えっ、あれって?
「きゃー、舞花よ。」
「舞花ちゃんだぁ。」
「可愛い。」
なんで舞ちゃんが?
花束を受け取った岳斗さんがこちらを向く。
「ほら、いっといで。」癒月ちゃんに背中を押された私は舞台に…。えええええっ?
「今日はGAKUTOを文化祭に呼んでいただき、また沢山の方に応援していただき、ありがとうございました。お陰様で無事ライブを終えることができました。このライブを企画してくれた舞花。ありがとう。そして、打ち合わせをしてくれた綾花ちゃん。君との打ち合わせはすごく楽しかった。時を忘れてしまうくらい。君の笑顔、声、仕草。全てが忙しさの中疲労していく心身を安らがせてくれた。昨日君が流した涙。これからは悲しみで泣かせることはしない。」
私に一歩一歩近づいてくる岳斗さん。もはや溢れる涙を抑えられるわけがない。
「これからも俺のそばで笑っていてほしい。嶋田綾花さん。俺とお付き合いをしてください。」私の前で膝をついて、花束を差し出した。
会場がざわめく。スポットライトが私たちにあたる。もう、優菜ちゃんの仕業ね。
私の答えは決まっている。
「はい、私と一緒に歩んでください。」
花束を受け取った私をだきしめてくれる。
私がお父さん以外の男性から受け取った初めてのぬくもりを手にいれた瞬間だった。
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