二、手のひら一つ分のぬくもりで

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   私が言い放った途端、戸の傍で固まっていた集団が我先にと雪崩れ込み、私を取り囲んだ。 「一年前の事件から、お心を乱していらっしゃるのです」 「特に今は、お気持ちが高ぶっていらして」 「どうぞ寛大なご処置を」 半分は、私を背に庇いながら妹王に訴えている。  そして、 「落ち着いてくださいまし」 「私どもは、どこまでもついて参ります」 「自棄になられるのは、どうか我々のためと思って堪えてください」 私へ必死に取りすがる者達が、残り半分。  乳母や乳兄弟、教育係など生まれた時から傍に居てくれた者達だった。しかしそれだけではない。侍女や従者、身分のある側近達まで、この大騒動に加わっていた。  皆の熱い支援は私には唐突で、違和感が強かった。たくさんの真剣な瞳が、私を通り越して違うものを捉えているのではなかろうかと思える。  私は、私を慕い力を尽くしてくれる彼らのことすら、ずっと見えてなかったのだなと、自分の視界の狭さに愕然とし、そしてもう一度、納得した。  私は、さかしらに皇家の未来を憂い、国家のあり方に悩み、国民の生活を案じながら、その全ての向こう側にツヅをのみ見ていたのだ。     
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