二、手のひら一つ分のぬくもりで

16/17
前へ
/17ページ
次へ
 妹帝に触れられていた頬が、また、じんと熱くなった気がして、そっと自分の両手を重ねた。  私は、その手を求めていた。ただそれだけだった。  ツヅの温もりをただひたすらに求めた小さな幼女が、私であった。  こんな卑小な私が“私”なのだと受け止め、それが意外に温かく感じることを静かに驚いて、私は再び考え始めていた。  ツヅは私に何を求めていたのか、もう一度問う。 “梅宮らしくあることが、私の望みです”  彼の言葉が、今度こそ私に届いたと感じた。  こんな私にも、できることがあるかもしれない。こんな私だと、判った今だからこそ。  その時だった。  振りかぶった腕が勢いよく下ろされる動きを、横に感じた。  見えたわけではない。それでも何が起こるのか、嫌な予感はあった。だからこそ、急いで振り返ったのだ。  しかしその時にはもう、男性がツヅに短剣を刺し終えていた。  男性が怒鳴り散らしているのも、周りの人間が男性を取り抑えるのも目の端には捉えたが、意識はただツヅだけに向かう。  胸部に短剣が刺さっていた。  ツヅの顔へ視線を向け、顎の下に手を差し込む。まだ温かい。脈もあった。  となれば、私ができることは1つだ。  神の力を以てしても死人を蘇生することはできない。     
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加