花七日

3/65
前へ
/65ページ
次へ
 その店内は少しばかり普通の花屋と違っていた。色とりどりに織られた布の上に椿のそれとよく似た種が、ごろごろと転がっている。  そこには、酷く顔立ちの美しい少年が立っていた。  少年が、にっこりと笑ったような気がした。 「今日はどんな花をお求めですか?」  背中に声をかけられた。彼は彼の意志など全く無いかのように、一つの種を見ていた。気がつくと、 「ひとつ、いただくよ」  と続けていた。無意識に出てきたその言葉は彼にとって衝撃的だった。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加