花七日

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 戸が開き、中に入ってきたのは女よりは年上で、老婆よりは若い女だった。  スーツを着て眼鏡をかけた女は、革張りの大きなバッグを持っていた。  スーツ姿の女は、先客がいるのにはまるで頓着しないまま、慣れたようにそばにあった椅子を引き、そこに座った。老婆は黙って茶を置く。 「この前の子は、あんまり笑ってくれなかったのよ」 「そうかい」 「最近笑ってくれる子が続いてたから、この前の子みたいなのは新鮮だったわ」  スーツ姿の女は茶をすすってから笑った。  何の話をしているのだろうと、女は注意深く様子を見ることにした。 「でも、笑ってくれないのって、育て方が悪かったから、なのよね」 「取扱説明書どおりにしてればいいってもんじゃないからねえ」 「そう、それが難しいんだけど……。もう、1週間も世話をしていないの。張り合いがなくて寂しくて」 「そうかい」 「今度は青い色の花がいいわ。ねえ、そういう種、今、ある?」 「ああ、あるよ。ちょっと待っておいで」  老婆は奥の部屋に姿を消した。
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