花七日

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 沈黙が下りる。  そしてスーツ姿の女は、ようやく女に気がついたように視線を向けてきた。 「あなたも、新しい花の種を譲ってもらいにきたの?」 「え……ええ……」  挨拶も何もなしの言葉に戸惑いながら頷くと、スーツ姿の女は何かに納得した様子で首を縦に振った。 「いなくなっちゃうと寂しいのよね。私、これで32回……35回目だったかしら」 「そんなに……」 「だから育て方もベテランよ。色々失敗したりもしたけどね、試しながら育てるって言うのも楽しいの」  楽しげな様子に、女は言葉に詰まった。
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