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病院で花は様々な検査をされた。体温は35.2℃だった。体重は29kgにまで落ちていた。
その他、脳波や心電図、CT、MRI、血液検査など、ありとあらゆる検査を受けた。また、個室で簡単な絵を描いたり、いくつかの質問に答えたりもした。
そして花はようやく医師と話すこととなった。
「お母さんも一緒に話をするわ。」
母親は今にも泣き出しそうな顔で言ったが、花は
「ごめんなさい、一人で話したいの。」
と母親を待合室に一人残して診察室に入った。
花の担当となったのは、まだ30代といったところであろうか、若い栗色の髪の医師だった。花が診察室の扉を閉めると、医師は座ったまま
「こちらへどうぞ。」
と優しい声で言った。花は黙って車椅子のまま、ゆっくりと医師の前に進んだ。
「つらいかもしれませんが、お話をしましょう。」
「…はい。」
花の手は少し震えていた。
「普段は何をして過ごしていますか?」
「…何も、していません。」
「夜は眠れますか?」
「…2時間、くらい。」
「食事はとれていますか?」
「…食べます、けど、吐きます。」
医師は花の話すペースに合わせて、ゆっくりと質問をしていった。花は最初は緊張していたが、その医師の優しい声と話し方に、少しずつ心を解きほぐされるような気がした。
数時間かけて医師と様々な話をした。そして最後に医師は
「今後の治療の話をしたいので、お母様を呼んでもいいですか?」
と訊ねた。
花は
「…はい。」
とだけ言った。
医師は母親を呼ぶと、静かに話し出した。
「花さんは精神的なダメージと栄養不足から大変衰弱されています。このままでは命も危ない状態です。花さんには入院して頂きますが宜しいですね?」
母親は、大粒の涙をこぼしながら
「花がそんなことに…分かりました、花を宜しくお願い致します…」
と弱々しい声で言った。
花は、精神病院に入院することになった。
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