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精神病院に入院したその日から、花は栄養剤の点滴を24時間受けることになった。それと同時に、気分を良くするための抗うつ薬や不安を取り除くための安定剤、眠りを改善する眠剤など様々な投薬治療も始まった。
病室は全て個室で、花の病室の窓からは中庭の花壇が見えた。ただ、窓ははめごろしで、その外側は白い鉄柵で覆われていた。
花は入院して初めて、この精神病院が「月の光病院」という名称で、担当医師は「吉井」という名前であることを看護師から聞いて知った。幾度か聞いた気もしたが、記憶には残っていなかった。
入院生活で唯一楽しみだったのが食事の時間だった。けれど、花の期待とは裏腹に、病院で用意された食事はおかゆに刻んだおかず、果物という物だった。味付けは薄く、量もそれほど多くはなかった。
もちろん、このメニューには消化をよくし、早く口からの栄養摂取だけで体を維持できるようになるため、という意図があったが、花はこれに酷く苛ついた。
これまで、大量に食べることで心を満たし、吐くことで爽快感を得ていた。それが突然、両方とも奪われたのだ。大量に食べることも許されず、食べる量が少ないため吐くこともできない。
花の苛立ちは、やがて絶望へと変わっていく。
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