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第一頁 夢の主は
『友達』ってなんだろう?
そう考えたことがある人はあまりいないだろうけれど、私はこの頃よく考える。どこからが友達、どこからが親友、どこからが……?
考えていくうちに別の事を考えてしまい、それが邪魔でそれ以上何も考えられなくなる。まぁ、私にとって、それが普通のことなんだろうけれど。
どうか。聞いてほしい。これは、大学生だった私が体験した。少し不可思議な出来事を綴った小説である。
***
上へ無限に伸びる入道雲。無数に咲き誇るひまわり達がその身を捻らせ、まるで避けるかのように出来た一本道に佇む、一つのシルエット。
その姿はぼやけていて、細目でやっと形がわかるくらい。身長は私よりも低く、小柄な体系をしていた。髪の色は焦げ茶色で、瞳の色はよく分からない。でも、特徴的なその姿に、私はどこか見覚えがあった。
『…………』
口が動く。その子は何かを言っている。しかし何を言っているのかは分からず、けたたましく鳴り響くセミの鳴き声によってその声はかき消されるのだ。
やがて踵を返し、歩き出すそれが、まるで遠くに消えて行ってしまう夏の花火のように感じてしまい、自然と涙があふれてきてしまう。
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