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 ごうっと大きな風が通り過ぎて、そして雲ひとつない空は、一瞬、巨大な影に遮られたーー。  そんな気がして、思わず僕は目深にかぶっていた制帽を脱ぎ捨て、澄み切った青の中に彼を探して目を凝らした。  もしかしたら、彼ーーあの白い翼竜は、今日の朝日が昇り切るのを待たずに、死んでしまったあの翼竜は、最後の一頭ではなかったのかもしれない。まだこの世界のどこかに翼竜は生きていて、あの長い首と尾で真っすぐに風を切り、美しい四枚の翼を広げて悠々と空を飛ぶ姿を、僕に見せてくれるのかもしれない。その背に、小さな翼竜使いを乗せてーー。  僕は強い日差しに目を細め、懸命にその巨大な影を探した。 「……おめえさんは変わらねえな、ジーノ」  ギイ、ギイ、と古びた木の音をさせて進む帆船のへりで、黙って煙をくゆらしていたジャコモ爺さんが、もう笑いをこらえ切れないというように、声を上げて笑う。  孫を可愛がるような、そんな爺さんの雰囲気に、僕は少し恥ずかしくなって、船底に転がった制帽を、もう一度ぐいっと目深にかぶり直した。 「変わらないだなんて、そんなことないよ。僕だってもうーー」 「十五か。早いもんだなあ、子供が育つのは……」     
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