センセイ
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 センセイ

先生と「おやすみ」を交わしたあの夜から数日。 取り巻く日常は良くも悪くもたいした変化もなく、先生と会ったのは幻だったのかとさえ感じ始める程、先生と再会する前と何も変わらない日々を繰り返していた。 …ただ、少しだけ違うといえば、ずっと膜で覆われているかのように言葉にならない感情が心の中に住みついていた事だった。 「あっ!いたいた、佐伯!」 今日も膨大な量の仕事を終わらせ、さあ帰ろうと両腕を上にあげ、一日中パソコンと向き合い固まった体を伸ばした時だった。 そんな、私を呼ぶ晃の声が耳を貫いた。 「……ん?どうしたの?」 最近、晃を見るとふと脳裏に先生の存在が過る事がある。 なんとなくそんな気持ちになるのがしんどくて、この気持ちが落ち着くまではほんの少しだけ晃とは仕事以外では距離を置こうかな、なんて事も一瞬考えたけれど、 やっぱり晃は大事な同僚であり友達だからそんな事はできないな、なんて晃を見る度にぼんやり頭の隅っこで考えたりもするようになった。 「あのさー、今日夜…ってか今から暇?」 「え?今日?」 珍しいと思った。 晃がこうして誘ってくるのは滅多になかったからだ。 晃は人柄が良いから、晃から誘うというよりもいつも誘われているタイプ。 上司、同僚、部下、全ての人からの信頼が厚い晃は自分から誘う暇もないくらい、人気者だったりもする。この間の先生と再会した飲み会だって、誘ってくれたあれはかなりレアな話だ。 「そう、今日俺んちでパーティーという名の飲み会すんだけど佐伯も来ない?」 相変わらずのニカッという人懐っこい笑みを浮かべていう晃。 その笑顔を向けられて、NOと言える人がいるのなら教えて欲しい。 「もしあれだったら片桐も誘っていーし!」 片桐、というのは萌のこと。 「あー…」 ただ、もう帰る気満々だった私は突然のそんな誘いに驚き、戸惑う。 どうしようかと、迷っていると 「いーじゃん?!明日ちょーど休みだしさっ?あたし行きたーい!」
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