あまい熱
全3/8エピソード・連載中
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 あまい熱

完全には拭いきれなかった、今だどこか余韻の残る温もりを感じながら皆の待つリビングに向かう。 その場所に近づくにつれ、鼻をくすぐるのは朝食の焼きたてのパンのいい匂い。 「あ、美咲ちゃん!朝食できたよー食べよ!」 そんなめぐみさんの声に私もテーブルにつく。……が、運がいいのか悪いのかちょうど空いている最後の1席は先生の隣。 昨日といい、さっきといい、気まずくて恥ずかしくて顔も見れずに縮こまりながら椅子に腰かける。 その瞬間に少しだけ見た先生の顔は、何事もなかったかのようにやけに涼しげな顔をしていた。 皆で「いただきます」と言って朝食に手を伸ばす。 「うわ、めちゃくちゃ美味しい!」 「ほんと、めぐみさん料理上手!」 お兄さんと萌は感激した様子で目をキラキラさせて食べるスピードを速めていく。 「…喉つめんなよ」 「ぐぉほ!」 晃がお兄さんにそう声をかけた瞬間、勢いよくお兄さんは喉につまらせたようでそんな光景に皆が笑う。 すごくすごくこの空間が楽しくて、幸せだった。 ……ただ、隣の存在をやけに意識してしまっているせいか、少しだけ朝食を食べる手にひとり変な緊張が走ってしまい、お兄さんや萌とは対照的に食べるスピードがゆっくりになってしまっていた。 意識したくないのに、してしまう。 『――美咲…』 今でもすぐに鮮明に思い出してしまう。 そんな寝ぼけた甘い声に、まっすぐ見つめてくる先生の真剣な顔。 本当に、頭がどうにかなってしまいそうだった。
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