2 そのヒト
全5/8エピソード・連載中
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2 そのヒト

――夢を見た。 『……』 その日は桜も少し散りかけていて、暖かな日差しの中まだ慣れない新しい制服を身に纏った私は次々と順調に授業を受けていた。 ……そんな、高校生になりたてのある日だった。 『……次の授業は確か……』 休み時間。まだ覚え切れていない時間割を頭の中で思い出していた時だった。 それは、確か授業が始まる合図のチャイムが鳴ったのと同時くらい。 ガラ……ッと音を立てた教室の前の扉に、ふと目を向けた。 『……!』 目を疑った。 そこには、私が当時片想いをしていた“先輩”に驚く程似ている人が立っていたのだから。 ―――――― ――――――――――…… 「……」 ふと瞼の向こう側に光を感じて、私は目を覚ました。 朝……? 意識は戻ったものの、目を閉じながら、まだ眠いなあ。なんて思った時だった。 なんだか自分に、いつもは感じることのない温もりと少しの重みのような違和感を感じて、まだ重たい目をゆっくりと開けた。 「……!?」 そっと開けた目の前には、逞しい喉仏。 呼吸に合わせて規則正しく動く胸板。 え、え、え? 一体、今自分がどういう状況に置かれているのか全く分からなくて目を見開く。 だけど、ふと香った大好きな香りにふっと昨晩の事を思い出した。 『――美咲』 私を呼ぶ、低い声。 甘い、……キス。 それから……。 「……」 思い出して、サァ……ッと恥ずかしさで血の気が引く音がした。 『……行かないで』 ……私、先生に、何した……?
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