背中に感じたぬくもり

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 娘を被害者として見ていない。うまく言えないが、彼は娘を可哀想な人として見ていないのだ。普通に話しかける。娘は反応しない。意味不明な言葉を発するだけだ。でも、彼はそんな娘と会話を楽しんでいるように話をして、同じ質問をして帰っていく。 『旅行に行く前日か前々日に知っている人に会いませんでしたか?』  森下刑事は同じ事を最後に聞いていくのが不思議だった、妻が森下刑事に聞いたら”何かを思い出すかも知れない”と教えてくれたと言っていた。  今までの刑事は、”事件の日”というが、彼は”旅行に行く”と言い換えている。  そして、犯人ではなくて、”知っている人”と言っている。  彼は帰り際に独り言の様につぶやいた  ”犯人は奥さんが知っている人”  確かに、そうつぶやいた。  それから、彼の言葉を注意深く聞いていると、気にしているのは、前日と前々日の話だ。  彼は、儂や妻にヒントを与え続けている。  儂と妻から、娘から、ぬくもりを奪った犯人(外道)のヒントをくれているのではないか?  そう考えるようになっていた。まずは、情報がほしかった。なんでもいいから情報がほしかった。  当時の新聞雑誌は、図書館で手に入れた。ニュース番組は、知り合いの弁護士に言ったら入手してくれた。全部ではないがかなりの情報量だが、儂と妻は情報を精査し始めた。  ニュースになった物や当時の新聞雑誌で書かれている被害状況から自警団の奴らの犯罪状況を調べた。     
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