背中に感じたぬくもり

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 そうか・・・奪った人にかえしてもらえばいいよね。  赤く赤く流れるぬくもりを返してくれれば、彼と宝物から奪ったぬくもりを返してもらおう。そうしたら、明日から寒くないよね。凍えなくていいよね。そうだ。返してくれないのから、奪い返せばいいよね。 ---  景子の心が壊れてしまって2年が過ぎた。  儂も妻も老い先短い。棺桶に片足を突っ込んでいる状態だ。  景子に何かしてやりたい。してやりたいのだが、何もできない。 「アナタ」 「わかっている」  今日も刑事が景子を訪ねてきた。  毎日、景子の様子を見に来るという理由を付けているが、健二くんと愛菜を殺した犯人の事を思い出さないか聞き出したいのだろう。2年。2年経っても警察は手がかりさえも掴めていない。  寝ていた、健二くんと愛菜を殺した憎むべき犯人。  景子は、風邪をひいて別室で休んでいた。普段なら、景子と健二くんと愛菜は並んで寝ていた。そうしたら、3人とも殺されていたのかも知れない。  儂にはわからない。わからないが、景子からぬくもりを奪った奴を許す事ができない。儂と妻からもぬくもりを奪っていったのだ。  景子の心をそして()人を殺した。     
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