背中に感じたぬくもり

3/13
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 儂と妻のぬくもりを、唯一と言っていい楽しみにしていた孫娘と産まれてくる予定だった孫を抱きしめて、ぬくもりを噛みしめるという些細な楽しみを夢を奪った奴をどうして許せるものか!! ---  今日も怒られた。  生き残った私が悪いの?  風邪をひいた私が悪いの?  ねぇ教えてよ。 --- 「森下さん。なんで被害者家族に何度も会うのですか?彼女・・・奥さん、心が壊れてしまって、犯人の事も、事件当夜の事も覚えていないのですよね」  なんで、森下さんが、3年間毎月同じ日にあの家に行くのかわからない。自費で見舞いの品を買っていっているのも知っている。  当初、300人体制の捜査も初動捜査のミスが重なって、犯人逮捕にいたらなかった。  それから、俺たちの部署に回ってきた。森下さんは、なぜかこういう事件を担当させられる事が多い。いじめの末にいじめられていた女の子が家族といじめていた生徒や先生を殺してしまった事件や、車と大量の血痕だけを残して人が消えてしまった事件や、ヤク中が街中で無差別殺人をした時の被害者が殺人を行った事件を担当している。  被害者と加害者がわからないような事件を多く担当している。 「わからないか?」 「はい」 「素直だな」 「それだけが取り柄です」 「取り柄じゃないからな。それは・・・。まぁいい。あの奥さん犯人を知っているぞ」 「え?本当ですか?」 「俺はそう考えている」     
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!