背中に感じたぬくもり

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 俺たちのところに事件が回されてきて、俺と森下さんが担当する事になったのは2年前。捜査本部が解散されてすぐだった。  被害者家族は、田舎町に住んでいる。  月命日に、旦那さんと娘さんが眠る墓に手を合わせてから、奥さんの様子を電話で訊ねてから訪問する。  刑事として、奥さんに話を聞くための訪問だが、『旦那さんの同僚が月命日にたずねてくる事にしてほしい』と、奥さんのご両親にお願いしていた。  遺留品はたった一つ。誰のものなのかわからないどこにでも売っているボタンだけだ。  森下さんは、そのボタンをよく眺めている。 「森下さん。聞いていいですか?」 「なんだ?」 「答えが返ってこないのになんで毎回同じ事を聞くのですか?違う事を聞いたら、何か思い出すかも知れないのに?」 「お前はそう教わったのか?」 「はい。少しずつ質問を変えていけば、嘘ならどこかで破綻すると教わりました」 「そうか、そうだな。でも、今回はそれはできないな」 「なぜですか?」 「それくらい自分で考えろよ」  考えろと言われても・・・な。 「本当に、お前は素直でかわいいよ」 「褒めていただいてありがとうございます」 「別に褒めてないからな。彼女は、何か喋ったか?」 「いえ」 「彼女は犯人か?」 「多分違うと思います」 「なぜ?」 「なぜ?捜査本部でそう結論が出ていますよね?」     
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