5.ゆっくり進むお付き合い

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部活中、 新入部員の佐藤くんが顔を歪ませて 右手首を抑えながら歩いてきました。 『また捻ったん? ちょっと見せて。』 佐藤くんの手をとって 腫れてないか確認。 総体まであと数日なのに。 『曲げれる? ちょっとクセになってるかなぁ? あんまり痛かったら 保健の先生に見てもらう方がいいよ。』 『大丈夫…やと思います。 テーピング、 自分で巻けないからしてもらえますか?』 『うん。そこ座って?』 テーピングをしながら ちょっと雑談してたらバサっと 肩にジャージをかけられました。 振り向くと透先輩。 『? なんですか?』 『それ置いといて。』 『はい。 あ。キャプテン! もうちょっとしたら生徒会の会計監査に 呼ばれると思うので一緒に来てくださいね。』 『了解。』 透先輩、なんか機嫌悪い?? 後で2人になったら聞いてみよう。 佐藤くんに向き直ってテーピングの続き。 『出来たよ。 緩くなったら巻き直すからまた来てね。』 『ありがとうございましたっ!』 佐藤くんは 元気にお礼を言って練習に戻って行きました。 先輩のジャージを畳んで 会計ノートに目を通していると 生徒会役員さんが呼びに来ました。 『キャプテン! 監査、次なので お願いします。』 透先輩に声をかけて 一緒に生徒会室へ向かいました。 今年度の予算についての話し合いをして 生徒会室を後にしました。 『先輩、何か怒ってる?』 『なんで?』 『さっき、ジャージ持ってきたときに 顔が怖かったから。』 『・・・佐藤と仲良さそうに喋ってて ムカついただけ。』 え~?? ヤキモチですか?? 嬉しくてニヤニヤしてしまう。 『あと、リホが薄着でイヤやねん。 ジャージの上、持ってきてないん?』 『ないよ。 だって暑いもん。』 『俺のでいいから着とき。』 『えー!! 弥生ちゃんもTシャツやのに?』 『弥生はいいけど、 リホが他のやつに見られるんはイヤやねん。 頼むから上、着といて。』 そんな言い方されたら 着ないという選択は出来ないなぁ。 体育館に戻って すぐに先輩のジャージを羽織りました。 ぶっかぶか(笑)。 Sサイズの私が透先輩のジャージを着ると ワンピース状態でした。 袖を捲れば着れなくもないかなー。 この日は先輩の匂いのするジャージに ニヤニヤしながら残りの仕事をこなしました。
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