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早速可愛らしい装いを隠す為に、今では懐かしい黒のゴミ袋に穴を空け、雨具のように着せる事にした。
随分と痛々しい姿になった我が子を見るが、彼はまだ不安であった。
「ダメだ、十分に美しすぎる。輝いてる。一億カラットくらい。もっともっと手を施さなくては」
彼は手当たり次第に調査した。
防犯ベルが良いと知れば、10個で1束にしたものを、娘の肩左右に括り着けた。
戦火の女性が難を逃れるために顔を泥塗れにしたとしれば、娘の顔に墨汁を塗りたくった。
次いでに下ろし髪も固く縛り上げ、蠍の尾を象らせた。
『寄るもの皆刺す』という脅しである。
念のため、護身用に青竜刀を持たせた。
もちろん模造刀であるし、万が一自分を傷つけないように、先端は丸みを帯びるよう施している。
「よし、これでもう安心だ! じゃあママのお出迎えに行こうか!」
手を繋ぎ、仲睦まじく駅までの道を行く。
誘拐の心配が無くなったことで、男は完全に安心しきっていた。
娘は不自由さを感じながらも、キラッキラの青竜刀を振り回してご満悦な様子。
夕暮れ時の朱に染まったガードレールを、カンカンカンと鳴らしながら、慣れ親しんだ道を往く。
だがその時だ。
男の想定から外れた事態が巻き起こる。
「お父さん、そこのお父さん」
「ちょっとお話良いかなー。すぐ終わりますんで」
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