私の大切なあなた

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 唇を尖らせる今日子にちらりと目を走らせて草介。メガネの向こうの凛とした視線に今日子はフニャリとしてしまう。 いかん、私は不機嫌なのだ。わざとツンと顎をそらして目をそらしたけれど。残念、今日子の意に反して、眠りかけの子猫みたいな迫力しかなかった。 「草さんは寝ないの?」 「んー、もう少し。このレポート仕上げちゃいたいんだ」  ボソボソと返される言葉に脱力して今日子が目を閉じ、両腕に抱えたクッションに額を預けると、額に当てていたタオルがパタリと床に落ちた。  カタカタとキーボードを打つ音が止まりスリッパが床をする音が近づいて来たので今日子はゆっくりと薄眼を開ける。 「ほら、寝かかってる」  人によっては無表情に見えるだろう、メガネの奥の瞳がかすかに揺れた。最近の体調の悪さを隠してはいる。あーでも、勘付かれてるかもしれない。珍しく感情の揺らぎを見せた草介に涙が出そうになった。心配してくれてる?……。今日子が微笑もうと顔を上げると、チュッと軽く音を立ててキスされた。  違う違う。キスをして欲しいわけじゃなくて……。     
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