じいちゃんが住む村

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 ほぼ一日がかりで家に向かう間、俺はスマホで色んなことを検索した。  じいちゃんのいる村の名前や、横棒が四本ある鳥居のこと。それらを検索したけれど何の情報も出ない。そう、あの村は実在しているのに、どこにあるのかすら検索に引っかからないのだ。  ただ、横棒四本の鳥居は一つだけ、噂話レベルのヒットがあった。  とある神様を祀る神社では、鳥居はそういう形をしていたが、その神は土地に豊饒をもたらす代わりに生贄を要求したため、信仰する者もいなくなり、今はもうその神様を祀る神社は日本には存在していない。  かなり前から放置されたままになっている、古代伝承みたいな話ばかりを扱ったサイトに残されていた書き込み。それが俺の知り得た、あの村に関連する唯一の文章だった。  日本には存在していない? でもじいちゃんの村の神社は、確かに横棒が四本の鳥居だった。…だからこそあの村は、ネットで調べても情報が得られないようにできているのだろう。  俺に道を尋ねたあの人達が、どうやってあの村のことを知り、行き着いたのかは判らない。でもあの村は足を踏み入れてはいけない場所で、特にあの神社の御神体である岩は、決して関わってはいけない代物だった。  今なら判る。子供の頃、年に数回じいちゃんの家に泊まらされ、神社にお参りをし、村の人達に挨拶をして回った理由が。  昨日の届け物が何だったのかは判らない。だけどあれを届けるために俺はこの村に一人で来る必要があった。その時に備えて、俺はあの村の総てに、自分がじいちゃんの孫であることを示されていたのだ。  長い年月をかけたじいちゃんの目論見は成功したのだろう。おかげで今、こうして俺は無事に家へ向かうことができている。  そして、そうまで必死に俺を守ろうとしてくれたじいちゃんの気持ちに応えるため、俺はもう、何があってもあの村に行くことはないだろう。   じいちゃんが住む村…完
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