夏の休みの前に驚愕する

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夏の休みの前に驚愕する

終業式の日に受け取った通知表に一喜一憂しながら、美術準備室に向かっていた。いつものように空の弁当箱をに満足しようと思ったが、添えられている封筒に息が止まりそうになった。今まではこんなものはなかった。お弁当は完食で胸をなでおろしたが、この白い封筒はもしかしたらと思い手が震えた。 今開けるべきか、家に帰って開けるべきか迷った。もう、お弁当は要らないと言う内容なら、ここで読みたくはない。涙でグズグズになった私の顔を晒しながら帰るなんてありえない。 弁当箱とこの手紙をそっと鞄にしまった。朝子と落ち合い校門を後にする。 「大丈夫?」上の空の私に朝子は問いかけた。 「通知表が悪くって親に怒られるかなって」 そう言い訳をした私に「うっそーん」と朝子は私を小突いた。 「千尋が悪かったら私はどうすればいいのよー。自殺ものだわ」 大げさにリアクションする朝子に癒された私は彼女に秘密がある。ただ、先生にお弁当を作ってる。それだけの行為なのにそれ以上の行為なんて無いのに、なぜ隠してるんだろう。それ以上の行為を望んでいるのかも、そう気づいた瞬間背すじが凍った。こんな暑い日に背すじが凍るなんて有り得ないはずだと思ったが、顔を上げた時、心配してる朝子と目があった。 「最近おかしいよ。ほんとに大丈夫?」 「うん、大丈夫」 「四月から変だよ。もしかしていじめ?誰よ、ぶん殴ってやる」 ファイティングポーズを決める朝子に苦笑した。 「敵じゃないよ」 おかしくて仕方ない私に朝子は冷や水をかけてきた。 「同じクラスの田中君さあ、授業中、たまに千尋のこと見てるよね。ああいうのキモいよね」 「気のせいでしょ」 平常心で否定したが、なぜかイラっとしていた。朝子は悪くない。私も田中君にイラっとしてあの喫茶店を飛び出した。なのになんでこんな気持ちになってるんだろ。訳がわからなかった。 あの日の公園を過ぎた時、朝子を例の喫茶店に誘った。二人でパフェをつつきながら、至福の時間を過ごした。
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