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放課後、クラブに入っていない私が帰宅しようと階段を降りる途中でホウキを持った先生に出くわした。驚いて私はのけぞってしまった。
「何してるんですか」
腰をかがめてちり取にゴミを入れている先生に問いかけた。
「掃除担当の生徒がみんな帰ってしまってね」
先生は申し訳なさそうに呟いて掃除の続きを始めた。
生徒が帰ってしまったからといって先生が掃除することないでしょと私は思ったが口には出せなかった。先生が一心不乱にホウキで掃いてる姿を見ながら後にした。変な人だと思った。
次の日に朝子が数学教師に呼び出された昼に職員室までついて行かされた。朝食を抜いていたのでお腹が空いていた私は行きたくなかったが、仕方ないなって思っていた。
小テストの件で数学教師に説教を食らっている朝子を横目に職員室を眺めるとあの先生と目があった。申し訳なさそうに頭を下げると、カップラーメンに箸を入れてかきこんだ。無表情でカップラーメンを食べていた。
次の日に何気なく職員室を訪れるとやっぱりカップラーメンを食べていた。よっぽど好きなんだろうと思った。
次の日にも先生は階段でホウキを動かしていた。
「カップラーメン好きなんですか」
私は何を血迷ったのか、唐突に質問を投げかけていた。
「妻が弁当作ってくれなくってね」
先生がそういった瞬間、私は走り出していた。涙が溢れて仕方なかった。先生の戸惑ってる姿を見ないようにして私は走った。
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