桜散る日に決意する

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「おはよう」と言って椅子に座って新聞を広げる。お母さんがお茶を入れテーブルに置くと湯呑みを見ずに手に取った。新聞に穴でも空いているのだろうかと毎日思う。 「大きい弁当箱だな」 お父さんの指摘に顔を引きつらせながら、「最近お腹が空くんだよねー。春だからかな」と下手な言い訳をしてしまう。広げた新聞でお父さんの顔は見えないがお父さんからは私の表情が見えているのかもしれない。 「そうか」 そこで会話は終わった。お母さんが朝食に味噌汁と私の作った卵焼きを持ってきた。弁当のおかずのついでに作った卵焼きをお父さんは無言で食べていた。私も無言で食べた。 お父さんは気づいているのかもしれないと思った。 お母さんが朝早く出る私に「部活でも始めたの」と聞いてきた。私は「図書室で勉強したいから」と適当にあしらった。図書室に行っているのは嘘ではない。でも、勉強は手に付かなかった。先生は今日のお弁当を喜んでくれるだろうかと胸を熱くした。
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