梅雨の日に想う(後)

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「待ったー」 朝子の声に変な声が出そうになった。 「キョってなに」 変な声は実際に出ていて赤面してしまった。 「お、かえでっちじゃん」 朝子は 二階の窓から首を出している先生を見つけて指差した。 「かえでっちって呼ばれてるんだ」 「みんなそう呼んでるよ」 あっけんからんとした朝子になぜか苛立っていた。クラスで孤立している私にはそんな情報は入ってこない。朝子は誰にでも仲良くなれる才能があった。それが羨ましかった。 「さっき、先生と見つめあってなかった。なんてねー」 朝子の言葉に「そんなわけないじゃない」と返すと「あれはないわよねー」と笑った。 「そーね」 私はとっさに朝子に同調したが、すぐに後悔した。 「ごめん、今日用事あったんだった。家に帰らないと」 私がそう言うと「具合悪いの?」と朝子は心配した。 こんな優しい親友になぜ私は苛立ってるのだろうか。一緒にハンバーガーショップで昨日観たバラエティー番組の話題で盛り上がるはずだったのに。 「ごめんなさい」 私が頭を下げると朝子は「本当に大丈夫?」と微かな声を絞り出した。 罪悪感に苛まれながら、帰宅した。
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