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「待ったー」
朝子の声に変な声が出そうになった。
「キョってなに」
変な声は実際に出ていて赤面してしまった。
「お、かえでっちじゃん」
朝子は 二階の窓から首を出している先生を見つけて指差した。
「かえでっちって呼ばれてるんだ」
「みんなそう呼んでるよ」
あっけんからんとした朝子になぜか苛立っていた。クラスで孤立している私にはそんな情報は入ってこない。朝子は誰にでも仲良くなれる才能があった。それが羨ましかった。
「さっき、先生と見つめあってなかった。なんてねー」
朝子の言葉に「そんなわけないじゃない」と返すと「あれはないわよねー」と笑った。
「そーね」
私はとっさに朝子に同調したが、すぐに後悔した。
「ごめん、今日用事あったんだった。家に帰らないと」
私がそう言うと「具合悪いの?」と朝子は心配した。
こんな優しい親友になぜ私は苛立ってるのだろうか。一緒にハンバーガーショップで昨日観たバラエティー番組の話題で盛り上がるはずだったのに。
「ごめんなさい」
私が頭を下げると朝子は「本当に大丈夫?」と微かな声を絞り出した。
罪悪感に苛まれながら、帰宅した。
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